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遠く 投稿者:嘉村奈緒 さん 投稿日:2002/09/30(Mon) 00:08 No.21   <HOME>

どこへいこう
どこへいこうか

電車の線路にそって
ふたり、手などつないで
転びそうになれば
ささえてあげればよいし
たんぽぽの綿毛が飛んでくれば
そっと捕えてみるのもいい

どこへいこうか 空から降りてくる
光はまぶしいと知ったのは
もう昔のようにも思えるし 背後から
独りというものを感じた年月は
胸の端で千切られている ようにも思える
君の姿に至っては
ただのラインだった頃もあった

どこへいこう どこまでいこうか
髪のうねりをなであげて
気付かない振りはやめようと思った
蜃気楼が揺らいでいる よ
見えている世界がのぼりつめて
所々に湿った痕を 僕らは跨ぐ

手など つないで
そっと捕えて みて
揺らぎは絶える事なく繰り返す
耳を澄まして
時たま抱き合ったりして
その肌とその眼の 淵で



なだらかな遠くは 地平線という



どこへいこうか

君とふたり、手など
つないで



Re: 遠く Aya-Maidz. - 2002/09/30(Mon) 00:09 No.22   <HOME>

結局2ヶ月近く休むことになった厳選レビューですが。予定から随分遅れても懲りずにリニュ準備を続けて、そのコンセプト次第でどうなるか分かんないのに強気で更新してみます。このコーナーは残す予定なんだもんねぇー。だ。

で。
今回は随分休みの期間が挟まった都合、前の月に掲載された投稿作というコーナーの趣旨を一旦無視して7月に MessageBoard へ投稿いただいた作品から嘉村奈緒さんの『遠く』を。

気がついたら投稿板からログは消えてたので、投稿があった際に私が一体どんなレスを入れたのかっていうのは実ははっきりと憶えてないんですけど、「奈緒さんから投稿があって腰が抜けた」と書いたことだけはなぜかはっきりと。それと「紛れもなく“青春”という時期の不変の鮮やかな青さに心奪われる」という趣旨の文意を書いた記憶もあり…。

そう、この作品が私の脳裡に飛び込んできた時、真っ先にイメージとして浮かび上がってきたのは描かれたふたりの情景ではなく、鮮やかにして取り込まれてしまうかのような空の青さでした。
どこまでも続く真っ青な空を背景に、平原を渡る線路沿いを手などつないで歩くふたりの光景。青春を題材にした映画の一場面のようであり、そしてその光景は初めて見る光景であったりするわけではないのに、それでもしんみりと静かに心の内に広がってくるものを感じるのはただ二人の歩いている姿が描かれているだけではなく、その向こうに広がる世界がこの作品の中に秘められているから。それは作品を彩る色感的にも主人公たちが今立っている時間軸的にも。


淡く描かれた世界は幻想的でもあり、それはいつまでも胸の奥に留まり続ける思い出のようでもあり。いつまでも色褪せずに残り続ける記憶っていうのはどれほどにまで美しいものなのだろう。って、齢も20代後半になった今でも脳裡に浮かび上がるこの詩の光景を垣間見て、ふと思う。

誰の中にも根付く一つの思い出。
誰の中にも憧れうる一つの幻想。

なだらかな遠くに見える地平線にはきっと
明日があるのだろう。

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