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暮れ時 投稿者:蛍 さん 投稿日:2003/02/17(Mon) 00:10 No.29  

ゆるやかに 陽は西のそらに
とけはじめ

気がつくと
わたしは夢をみていて
淡い淡い夢をみていて
あまりにも儚い夢をみていて
思い出すこともできない


熱く潤むのを瞼でとめて
頬杖をついたまま
ぼんやり
あしたのことを考える



あした
あの花は咲くかしら



陽はすっかりとけてしまって
跡形もなく

ちいさな星が
あかりをつけはじめる



Re: 暮れ時 Aya-Maidz. - 2003/02/17(Mon) 00:12 No.30  

年末年始にバタバタしていたのと、1月はFor youの方に連続コラムを掲載していて私の(ただでさえ小さい)キャパシティが一杯一杯になってた都合、一ヶ月ほどお休みしていた“厳選レビュー”でしたが。

今月取り上げる作品はF.y.に投稿がありました蛍さんの『暮れ時』。なんて言うか、ようやく蛍さんの作品を取り上げる機会が来ました、って感じです。私的に。特に最近の蛍さんの作品は安定しているので、投稿さえあればいつでも取り上げられるっていうのがあったもので。

その『暮れ時』。
蛍さんらしい、凝縮された静寂感漂う一篇。少なくともF.y.ではこういう作品を書せればば群を飛び出すような印象。特に最近の蛍さんに関しては詩で描かれている部分と、詩を成すもっと根底の部分のコントラストがすごく効いていて、凝縮された抒情を実感させるような程好い重さが余韻としてすんごく残るような感じするのよね。この作品にももちろん、それが当てはまっていまして。

この作品で私の目を惹いたのは作品内における時制の流れ方。それと題材と舞台のマッチングのナチュラルなところ。

“暮れ時”っていう泡沫の瞬間。そこから淡い夢に繋がっていく。淡い夢は目醒めとともにぼんやりと消えていく。
ちなみに「泡沫(の)」は「消ゆ」にかかる枕詞でもあって、暗に、そして自然にこの形へと繋がっていく。言うなれば典型的な構図ではあるんだけど、こういう基本的な部分は絶対にはずさないのが蛍さんの作風の良いところでもあると思うんです。

続いて

> 熱く潤むのを瞼でとめて
> 頬杖をついたまま
> ぼんやり
> あしたのことを考える

儚く、淡く消え行く夢の記憶に、それでも残り続ける不安の抒情。更には明日という未来に永続していく。で、

> あした
> あの花は咲くかしら

これがすごく良いなぁと思う。主人公が考えるのが明日の自分の事ではなく、『あの花』。これまでの話の筋の通り、単純に花のことを指しているわけではなく、思う全てを一つにまとめて主人公はそれを『花』と呼んでいる。

で、最後の

> ちいさな星が
> あかりをつけはじめる

この締め方って上手いなぁって思うんですよ。
この詩目の一文がすごいって言うんじゃなく、『星』って希望の象徴としてよく用いられるんですけど、話の流れとして“思う全てを一つにまとめて主人公はそれを『花』と呼んでいる”というところから繋がっているという一面を見ていくと、それを一重に『希望』と同期できるっていうことでもあって。特別な何かではなく、時間の流れるその末にあるものを『希望』と呼べる穏やかさがすごく漂ってくるのね。冒頭から汲み取れるように満たされているというわけでもないのに、そう言える穏やかさ。

すごくいい時間の積み重ね方をして来たんだなぁって、実感する。この詩、一篇を読むだけで。そう言うと蛍さんは笑うのかもしれないけれど。


ひとつ。二連目

> 気がつくと
> わたしは夢をみていて
> 淡い淡い夢をみていて
> あまりにも儚い夢をみていて
> 思い出すこともできない

これはちょっと説明的過ぎてちょっと作品全体の雰囲気から浮いたように映るのはもったいないなぁって。ここが作品の中に流れる想いの起点になるので力を入れられたらと思うところです。



ありがとうございます  - 2003/03/01(Sat) 21:49 No.31  

Ayaさん こんばんは。

自分の詩をこれほどまでに丁寧に批評していただいた経験がなかったので、Ayaさんにここで批評をいただいてそれだけでこの詩を書いてよかった。としみじみ思っています。

最近、自分の書いたものがどれも似たような雰囲気に感じれて。
そしてそれが個性と言えるものではないような。。。
ちょっとモヤモヤしています。

>すごくいい時間の積み重ね方をして来たんだなぁって、実感する。この詩、一篇を読むだけで。そう言うと蛍さんは笑うのかもしれないけれど。

笑いはしないけれど…照れます。
そうなのかな?そうならうれしいんだけれど(笑)

そして最後のご指摘。
やはり…という感じです。
ここは私もちょっとしつこい。。。と感じていたところなのです。
 >思い出すこともできない
この言葉に深みをもたせたくて連ねてしまったのですが、読むたびに、読み重ねるたびに、この箇所がうるさく感じてすごく気にかかっていたのでした。

なので、Ayaさんの「説明的過ぎ」との指摘は、やっぱり、そうだよねぇ。と素直に共感です。
そしてこのように感じていたのは自分だけではなく、読み手の方々もそう感じるのだってことがよくわかりました。

大変勉強になりました。
どうもありがとうございました。

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