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静謐な絵画 投稿者:みん さん 投稿日:2002/05/06(Mon) 23:32 No.12  
あなたはまどべにきちんと指先を揃えて座っている。
ただじぃと空(くう)を見ている。
さしこむ光にあそぶ埃にも視線を揺らさずに
ただしんと微笑んでいる。
日差しは熱いのだけれど先(せん)から背筋はひやりとしている。
さきほどやすんで良いですよと言ったとき
あなたははいと言ったので休んでいるのだろうけど
やすんで良いですよといってからもう三分間
爪先もぴくりともさせず
あなたは座っている。
休憩は五分間。
僕はいつもそう決めているのだけども
古い絵画のように動かないあなたに
僕ももう息もつけずに
休憩おわりぃ と
声を上げる。
あなたは漸く首をすこし揺らして僕を見ると
はい
と言ってまた
先と同じところをぴたりと見る。
生まれたときからそうしていたように
なんの苦もないように
飾られた絵のように
目をすこし伏せて
おだやかに笑う。
今日もまた
窓の向こうや
薄汚れた壁ばかりが布地を埋めて行き
あなたのいるところは空白のまま。
日が暮れてきたので
お疲れ様と言って賃金を手渡す。
あなたはそれを受け取るとすぅとお辞儀をして
扉を開けて出て行く。
ゆらゆらと遠くなる背は翳り
暗くなった部屋はふぅと空気をゆるめる。
僕はキャンバスのたおやかな空白をぼうとみつめ
そのタイトルなぞをひとりごちてみる。


Re: 静謐な絵画 Aya-Maidz. - 2002/05/06(Mon) 23:33 No.13  

今回はリクエストを受けてFor youに投稿された、みんさん作の『静謐な絵画』。投稿日を見れば“新作の投稿で埋もれた作品”に位置付けるわけにはいかなさそうなんだけど、投稿ペース早いからねぇ。活気があることはいいことだけど。

さっそくだけどこの作品、私の印象的にはFor youでのレスがすごかった。筆者の日記のネタになるのも頷けるくらいすごかった。あれは最上級の賛美だ。

「この詩を再読したくて目が醒めてしまいました」

私も言われてみたいよ。


で、メイン・ディッシュの詩の方はと言うと。
やっぱ私もすごいと思った。一読して衝撃を受けるようなインパクトとかはないし、それどころか一読程度じゃなんだか分かんない作品とも言えそう。万人に伝わってるとは思えないし、どっちかと言えばこれといったアピール・ポイントさえ見出しにくいとも思うわけで。

この詩、不思議なんですよ。読めば読むほど不思議。んで同時に私には絶対書けないジャンルの作品だと思った。だって登場人物が動かないんだもの。ぶっちゃけた話、本当に動かない絵画のモデルに焦点を当てながら、休憩からの時間を描いてるだけ。なのに空気は動くの。しかも知らないうちに最後まで読んでる。で、ふと気づくわけ。詩の世界に流れるゆるやかな空気の動きを実感してる自分に。

その読後の余韻に浸ってると、ふと違和感を抱くんですよね。例えゆるやかでも空気が動くには何らかの原因があるわけで。一番明確に表現されてるのが

> あなたはそれを受け取るとすぅとお辞儀をして
> 扉を開けて出て行く。
> ゆらゆらと遠くなる背は翳り
> 暗くなった部屋はふぅと空気をゆるめる。

っていう部分になるんだけど、モデル役の“あなた”言葉以上の存在感を放っていたことに気づかされる。どストレートに「空気をゆるめる」って綴られてるけど、本当に雰囲気がここで緩むから。

欠落することの違和感で示される存在感。こうやって描かれる人物の存在感って大きいよ。だって冷静にイメージしてみればこの人、まぢで怖いもん(笑。

............

あれ?
感想レスに対するみんさんのレス

> 空気は張り詰めるというよりはよどんだとかいうかんじ

それを言うには“あなた”は凛としすぎでしょ。みたいな。


Re: 静謐な絵画 秋乃 - 2002/05/08(Wed) 16:36 No.14  

リクエストさせていただいた秋乃です。
でもリクエストしたものの、実際どう書いたらいいか分からないので、勝手に詩をプリントアウトさせていただき、一晩くらい眺め倒しました。ちなみに悪用や、商用なんかしないので・・・見逃してください(をぃ。

んで、詩について。
眺め倒してる間に、細々と考えてみました。
・登場人物
「あなた」と「僕」
主に「僕」がみてる「あなた」の動きで構成されていて、「僕」自身の心情とかは特に書かれてないのだけど、そのバランスというか、距離が不思議と現実的に想像させる。

・詩を構成してる技法
こう、大抵、詩っていわれると、長くなればなるほど、幾つかの連に分ける傾向があるんだけど、そうしないと読みづらいとか、言いたいことが明確に見えてこないとか、理由は様々あるんだけど、この詩はこれで逆に良かったんじゃないかな、と。
更に言えば、これだ!という表現がないのも、普通だったら詩の印象が薄くなるところなのに、この詩の場合、逆に印象深くしてるかな、と。
何を言いたいかというと、秋乃にとって、本来マイナスに働くとしか思えない事が、逆にプラスになってると。
これは正直に驚きでした、すごい!と。

眺め倒して思ったのは、この詩、全体的な空気が売りであって、細かいところってのは本当に支えやら、骨格の一部で、それ以外の役割を持たされていないと、そんなこと言っちゃ細かい推察の意味は?ってことになりかねませんが、味わい尽くすということで、細々と考えてみました。
・・・うーん、まだ何かありそう。
でも、現時点でこんなところです。秋乃でした。


Re: 静謐な絵画 Aya-Maidz. - 2002/05/13(Mon) 17:48 No.15  

ということで。ここのレスのテンポの速さがそのまま私の作業量の多少を推し量るバロメータになっているのは事実です。そりゃあともかく、決して秋乃さんの書き込みを無視してたわけじゃないからね。

んじゃさっそく。今回は秋乃さんが取り上げた箇所を重点的に見ていくことにしましょうか。ね。

1)登場人物
画家とモデルっていう立場の差がそれだけで、登場人物二人という作品においておいしそうな構図になる距離と言えるかもしれないね。実際のところはよっぽど特別な関係を表現した詩でない限り、登場人物の物理的距離ってこれくらいの間が空いてるのだろうって想像できる詩が多くて、そういう意味では取り立てて目を向けなくても良さげな部分とも言えるんだろうけど、このままモデルの“あなた”が部屋を出るまでこの距離が保たれるというのは意外と新鮮な配置に思えるのよ。

2)技法
これ、実際のところは思い切りが良かったんだと思う。で、その思い切り方が読み手に好感を与えられたのは何よりこの詩で何を表現したかったのかが明確な形で筆者の中にイメージできてたからだと思うのね。
FreeBBSの方でみんさんが

> モデルやってるときだけかのじょはかっこいいひとなの、
> というのをかきたかったんですね。

ってコメントを残してくださってるんだけど、これが空気というか舞台の雰囲気を通してはっきりと表現されてる。For youでのレスを見ると、モデルの間は彼女がかっこいいのは前提としておいて、それでもその間の時間そのものは淀んだ感じをイメージしてらっしゃったみたいなんだけど、そう捉えるとするなら“あなた”に焦点が集まりすぎたかな。と。
その場合はもっともっと景色になってしまっても構わなかったと思うんですよね。“あなた”の表情が確認できた時だけカメラの捕らえた舞台は凛とする、程度でも良かったのかな。と今になってみれば感じるわけで。

ここでのポイントってFor youでみんさんが秋乃さんに返した通り

> 書きたかったのは空気とかそういうもの

なわけで。こうした場合ってやっぱりカメラアングルって俯瞰視点になることが多いんですよね。とりあえず舞台・風景を映す。舞台って一定で固定されたもののように思いがちだけど、風が流れたり、登場人物が何気ない仕種を取ってみたりして結構多様に動くものなんですよね。特に人間って無意識な行動が突き詰めていけば潜在的に思ったり感じたりしていることを反映していることが多くて、それだけで舞台上に流れる雰囲気を表現することができるわけで。
そういったのを小気味いいくらいにはっきりと描いたのがFor youでの評価に繋がったんでしょうね。


今回は秋乃さんのレスに返す感じで。おしまい。


恐縮。 みん - 2002/05/29(Wed) 12:53 No.16   <HOME>

そして感謝。
ざっくり書いたこの詩をこんなところに取り上げていただいた上
こんなにしっかりよみこんでいただいてなんつうかものすごくしあわせ。
ふにゃ。
舞台を引き合いに出されたのがさらに嬉しかったり。
舞台ではコネタが好きです。そういうのを書けるととてもいいと思っています。ささいなからだの動きをいかに詩を崩さずにしっかりと読み手に読ませることが出来るか。
精進。
こいつではそれはわりと出来ていたのかとほくほくです。
あ、うちの掲示板でこそっと解説みたいなのを書いてあります。
なんか全然違うかも。投稿掲示板にあるのでもし良かったら。

どうもありがとうございました。


Re: 静謐な絵画 野山あるき - 2002/12/18(Wed) 01:48 No.27   <HOME>

あ はじめまして
私は絵を描きますが ちょっと
この詩はなんか スマートじゃないなと
感じました
空気とその話の題材は 面白いですが
なんか語リ手の出方が気になるのと
省略可能な言葉の表現があるのではと思いました

もう少し絵に対する変わった見方 情熱も
見せてほしい気がしました
ああ たぶん おとなしい絵なんでしょう

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