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解かれた抽象 投稿者:たるみ さん 投稿日:2002/11/04(Mon) 23:47 No.23  

その空っぽのビンには
「神秘」とある
そこに私たちは神秘を見る

その空っぽのビンには
「絶対」とある
そこに私たちは絶対を見る

その空っぽのビンには
「私の心」とある
そこに私たちは私の心を見る

その空っぽのビンには
「 」とある
そこに私たちは意味を見る

その空っぽのビンには
何も書いてない
そこに私たちは空っぽのビンを見る



Re: 解かれた抽象 Aya-Maidz. - 2002/11/04(Mon) 23:48 No.24  

今回のレビューで取り上げる作品は随分迷いました。F.y.から蛍さんの『秋桜』、あるいははなさんの『天井の下』。現時点ではまだ両作品とも過去ログに流れてないしなぁ、と思いつつどっちを取り上げようか迷った挙句に今回取り上げるのは既に過去ログに行ってしまったたるみさんの『解かれた抽象』を。

取り上げることにしてみたものの、しかも作者のたるみさんに掲載許可のお願いをした時点で5日頃には掲載しますって連絡してるんで既に多少焦っている4日19:30なんですけれどもね、現在。いや、ここで句点を打っちゃダメだ、単刀直入に書くならばレビューとして書く内容を考えるのが難しいんです、この作品。

要はこの作品の本質って詩そのものの中には何もないんですよね。正に“解かれた抽象”と書かれたラベルの貼ってある空っぽのビン。本質は読んだ後の心の中に突如として表れるという、そういう感じなんです。
だから詩そのものについては語りにくいと言うか。既に及び腰、もとい逃げ(笑。


この作品、テーマとしては『抽象』っていう言葉で曖昧にしてる部分があるんだけど、詩を読んで私が見たのは人間の姿だった。それもはっきり、と。

作品の構図自体ものすごく単調で手法的にもプレーン。で、描かれている内容そのものもとりわけ目新しいことでもなく、けれど例えば

> その空っぽのビンには
> 「神秘」とある
> そこに私たちは神秘を見る
>
> その空っぽのビンには
> 「絶対」とある
> そこに私たちは絶対を見る

冒頭から引用した2連なんだけど、たわいのない主人公の仕種の中に人間の本質を垣間見せられるものがあるのね。これがその姿そのものでもあるの。
要は人間って当たり前のようにものを測る方法論が一つではないことを無意識的に理解してるところがあるのよ。ただ人はそれでは物事を認識することができないから何らかの基準でもって物事を測り、そこで認識した結果をカテゴライズして知識として携えようとするものなのね。
で、数多ある基準の中から人は如何にして一つの基準を持ち出すかと言えばその手段は二つあって、「自分の経験」と「他人の評価」なんですよね。この作品で描かれている人間の姿は後者の「他人の評価」によって自己の認識を見出そうとする姿。

見ているのは空っぽのビン。
だけど「神秘」とあるから必死でその空っぽのビンの中から「神秘」を見出そうとしている姿。彼がこのビンの中から何を見出すのかは分からない。あるいはこのビンの中から「神秘」を見出そうとする姿そのものが神秘なのかもしれない。

そして同時にこの作品に出てくるビンはきっと全て同じビンで、人はこのビンの中から名付けられた通りのものを見出すこともできうる。

空っぽのビンには人が『抽象』と呼ぶ森羅万象が眠っているのかもしれない。

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