Life is a Flower.

詩の話とかWebっぽい話とか、とにかく雑多に。

2006年08月30日

ロシアパンを売る少女@うおのめ文学賞

うおのめ文学賞の採点時は「ロシアパンを売る少女」は前に取り上げた「星屑の停留場にて」や「熱帯アメリカ」と違ってコンテスト形式で強く推せる要素を持ち合わせてないんで飛び抜けて高評価は受けないんだけどコンスタントにポイントを稼いでたかな。大江さんがやや高めの評価で、それと比べて私はやや低め。他のスタッフがその間くらいの評価をしてた様子。

この作品、物語としてはエントリー作の中で一番と言って良いくらい面白かった。じっくり読むとその度にちょっと夢想したくなる要素が幾つか含まれてるのもちょっと興味深いんですよね。時々ゆっくり読み入って、ちょっと考えてみたり、浸ってみる。そんな感じの。例えば7連目の

その貧しいロシアパン売りの少女は
「ロシアパンを売る少女」という絵が
国立美術館にあることも知らず
それが傑作とよばれていることも知らず
今日の糧を得るためにまた街頭に立つ

この、それぞれの少女の関連性とか。ここからまた新しい物語が一つくらい作れそうな。こういう程よい隙っていうか、行間っていうか、そういうのって物語を語る上では結構大切だと思うのよね。作品に入っていきやすくなるじゃないですか。うん。強引に読み手を作品世界に引きずり込むほど力はないんだけど、身を任せるとずるずると引き込まれていく。

ただ、逆にそこがコンテスト形式で甲乙をつける際には弱みになるのも事実。選考する期間には限りがあるし、他の作品も読む必要あるし。そうなるとある程度分かりやすいすごさ、ってのが必要になってくるんですよね。

分かりやすいすごさという点では、寸評では難ありと評価したけど転調のセンスは正直すごいんじゃないか、と。6連目は7連目にかかっていくんですよね。で、12連目に出てくる女王様って冬の女王(おそらく。雪の女王って選択肢もあることを思いつく。と追記)のことで、13連目以降を導くように劇詩っぽく場面転換。

ま、このすごさをどう捉えるかっていうところで今回は混乱の元と判断したんだけど、穂積みず(mizu K)さんにはこのセンス自体は今後も維持してほしいなぁ。と個人的要望。センス、という絡みでは正直に言うと1連目はコケてると思うけど。というか、改めて読み直すと1連目って浮いてるような。

奨励賞っていう形でこの作品を推すことも考えたんだけど、うおのめ文学賞のことを考えると"最終候補作 > 奨励賞"と位置づけて、一次通過以上最終候補作未満の作品を取り上げた方が良いかな?と考えて奨励賞では「片思い」を挙げた都合、結果としては「ロシアパンを売る少女」は埋没しちゃった感はあるんだけど。

でもこの作品は良いよ。エントリー作の中では長めで、転調に使われた手法が分からないと混乱するかも?だけど、さっき補足入れたんでそれを元に読むとすんなり物語に入れると思う。読んでない人は是非。そんな作品。

投稿時刻: 11:01 | カテゴリ: /poem/events | 固定リンク

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