弘前行きには寝台特急あけぼの号を利用した。北国に向かう夜行列車に乗るのはこれが初めてだった。上野駅に入ってくる車両が、いやがおうにも旅情を醸し出す。ホームには、カメラを抱えた旅人や列車ファンがいっぱいだった。
今回の席は二段客車。小学6年生の少年と相席になった。彼もまた、カメラを抱えて熱心に撮影していた。「前にもブルートレインに乗ったことがあるの?」と尋ねてみたら、満面の笑顔で「はい」という、じつにさわやかな返事が返ってきた。以前、はやぶさ号に乗ったことがあるといい、また全国各地の列車にも乗ったことがあるという。
今回もまた、おじさんと一緒に秋田の列車に乗りに行くのだそうだ。目的の列車に乗ればまた戻るのだそうだが、新幹線では1号列車に間に合わないので夜行を使ったのだと。
おじさんが顔を洗いに行っているうちに、少年がいろいろと話しかけて来た。列車の話をする彼は本当に楽しそうだ。スタンプラリーで、スタンプを全部集めたことがあるといい、その景品の時計を自慢げに見せてくれた。 これは将来有望だ。
籠原駅を過ぎた頃、少年は眠りについた。
翌朝、少年たちは秋田駅で降りていった。 空には雲が低くたれ込めていたが、きっと良い旅だったに違いない。
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