3.

       飲み屋「とんちき」

 

              酒も食事も大分すすんだ

              ナベも空いてきた

              皆、できあがっている

 

 

     しかし…あれだよ。俺はあいつは…絶対モノになると思ったね

 

美佳   役者も演出もなんでもできちゃったからね、一彦。

 

     なんで上京しなかったんだ

 

友紀   要は頭がよすぎたんだな…

 

     なんだよ、よすぎたって

 

友紀   演出って、結局、どんなに舞台を客観視できるかによるじゃない。

あいつの演出はすごかった、指示も的確だし、

作品も何かこうしまりがでてくんだよ

 

     別にいいことじゃねぇか。力あるってことだし

 

友紀   ってことはだよ…裏返せば俺達の限界も見えてたってことなんだよな。

上京して通用するかどうかまで判断してたんだよ、あいつの頭の中じゃ

 

     おい、まてよ。ってことはだ、

俺や祐輔を、一彦は「モノになんねぇや」って目でみてたのか?

 

友紀   まぁ、多少はあったんじゃねぇ?

 

     一彦そんな奴じゃねぇよ!なぁ、祐輔

 

祐輔   まぁ…一彦、ちょっと冷めてたトコあったかなって。

 

     おいおい

 

祐輔   でも…おれ、そういうトコ含めて…一彦すごいと思うんだ。

現におれ、もう芝居やってねぇし。

 

友紀   だろ!智だって未だにアマチュアじゃん。

 

     アマチュア馬鹿にするなよ、満足してんだよ

 

友紀   気持ちじゃなくってさ、現に食えてねぇじゃん

 

 

              智、言葉に詰まる

             

 

 

     あーあ、俺達そんなんだったけなぁ。

もっとワクワクしながら芝居やってたような気がしたんだけど…気のせい?

 

 

友紀   おまえ、いくつになってもかわんないねぇ。もうちょっとさ、現実みようよ。

 

美佳   でも、智のそういうとこ、変わってなくて安心した。

いつまでも夢おっかけてほしいもんね。

 

     祐輔もそうなの?

 

祐輔   え?

 

     おまえも冷めちゃったの?

 

祐輔   あ、まぁ…冷めたって訳じゃないけど…

しょうがない面もあるし…しなけりゃいけないこと多いしな

 

     ショックだよ、おまえは一番情熱もってたんだ、俺の中でさ。

おまえのキーワードは無鉄砲だよ、無鉄砲

 

祐輔   無鉄砲って…

 

     まさか静ちゃんも冷めちゃったの?

 

祐輔   あいつは…まだ劇団には…参加してるけど…

 

     まだ頑張ってるんだ!よかったぁ、さすが祐輔!私静子!愛してる

 

 

              智、祐輔に抱き着く

 

 

祐輔   うわ!きもちわりぃ

 

     あなた今夜は離さない!

 

友紀   おまえ飲み過ぎてんじゃねぇの?

 

 

              一同爆笑

              悪ノリ

 

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