1.
島
さびれた港
船が入ってきた。
おりてくる人間はまばら。
四十くらいの男、川中祐輔がその中に。
アタッシュケース
携帯電話を片手…
祐輔 だからさ、父さん…帰れないんだ…二日くらい。
仕事じゃないんだけど…。友達がね、亡くなっちゃったんだ。
…え、母さんにやってもらいなさい。いないって?…またお芝居か。
多分帰ってくるよ。うん、母さん、しってるよ、このこと。
大丈夫だから、学校いけよ、試験近いんだろ?
電話切る
男、歩きつづける
また電話
祐輔 はい、川中。あ、部長、申訳ありません、親せきが急に…
ええ…ニ日後のタ方には戻りますので…
十日の説明会には…あ、それとですね…もしもし…もしもし!
電話が切れた
時計をみる
今日は六日。
祐輔 (少しため息)
周囲をみる祐輔
降りた乗客は一人もいない。
もう陽も沈みかけていた。