投稿時間:2007/03/10(Sat) 01:12 投稿者名:凪葉
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- この投稿作に出された課題
- 「ほうき星の名残りがある雀」というタイトルで作品を書く
「ほうき星の名残りがある雀」
まだ目覚めない頭を抱えながら、いつものように朝を乗り切る。 昨日まで不安定な空は、春風にでも流されたのだろう。 晴ればれとした空に惚けて、 進む足取りを止めていた。 春のうららを味わっていては、仕事に遅れてしまうことも、わかっていたのに。 また、足取りを止めていた。 雀だろうか、むくどりだろうか、鳩ではないな。 鳥が鳴いている。 この春を楽しむように、鳴いている。 やはり雀か。 朗らかな空を遊泳しているのか、羨ましくも思えてくる。 人工的な建物にすっかり似合う姿に、どこか寂しさを感じた
瞬間――
その場を放れ、あっという間に高みへ昇り、春の空に轍を残し消えていった。 やがて轍が風になり、寝癖で跳ねた髪の毛を、くすぐるように吹き抜けて、雀の後を追ってゆく。 今日も仕事に行くかと、 澄んだ美空を、ほうき星のように消えてゆく雀を見送り、歩きだした。
名残惜しい心を残して。
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